設立趣旨
潜在性結核感染診断は100年以上ツ反を使用してきましたが、ツ反は抗原としてPPDを使用しているため、過剰な陽性診断や取りこぼし診断といった偽診断を除外することが難しく、結核菌特異抗原を使用した精度の高い診断法の開発が望まれてきました。
こうした中で近年、結核菌特異的抗原が発見され細胞性免疫反応により結核感染を診断することを原理とした二種類の結核感染診断法IGRA (interferon-gamma release assay)が開発・商品化され、使用されて参りました。
QFT検査は2005年4月より、T‐スポット検査は2012年11月より厚生労働省承認の下に使用されております。
IGRAは特異度・感度共にツ反より優れており、BCGワクチン接種や非結核性抗酸菌感染の影響は受けません。
このIGRAには、全血を用いるQFT検査と末梢血単核球を用いるT‐スポット検査があり、何れの方法も結核菌抗原特異的なTリンパ球から放出されるInterferon-γ(IFN-γ)を計測する方法です。しかしその細胞性免疫反応のメカニズムにつきましては明確にしなければならない課題も残されています。
また、結核対策を推進する上での重要なツールであるIGRAは、その性能と精度・有用性、適応条件、使用方法、使用条件などを正しく理解し、対象となる被検者に合った検査を使用することが重要です。使用開始から10年そこそこのIGRA検査を適正かつ効果的に使用し、普及するためには様々な医療現場から提示される課題や研究成果を中立的な立場で討議・検証・解析し、得られた成果を共有情報として発信する場が必要です。
本研究会の趣旨は正に此処に有ります。すなわち将来的にIGRA以外にも新たな結核感染診断法が開発されてくる可能性は大きく、今後新たに開発される結核感染診断法も含め性能評価・精度管理が結核対策を推進させる上で重要なカギとなり、前述の情報発信の場と同様に精度に関しても研究する場が必要となります。本研究会創立の趣旨は、これらの機能を包括的に遂行し研究し、発信する場となることです。
特定非営利活動法人結核感染診断研究会は、これまで任意団体であった「結核感染診断研究会」を法人化し、具体的な機能を明記致しました。結核感染診断検査法全般に亘る研究成果は公募し、そこから得られた課題について広い分野の方々と討議して、課題解決に関する情報の共有化と検査精度の安定化のための情報を発信します。
また、今後新しく開発されてくる結核感染診断法に関しても正確な情報収集と情報発信を行って、将来的には結核感染診断法全般に置けるアジアの研究拠点と成り、東アジア全体の結核対策の一隅を担う事を目指しております。
2012年4月11日
特定非営利活動法人結核感染診断研究会
代表理事 鈴木 公典
副代表理事 原田 登之